賃貸物件の退去時に気になるのが「原状回復」です。汚れや損傷をどこまで元通りにすれば敷金からクリーニング・修理代を引かれないで済むのか…悩みますよね。まず、大切なのは原状回復のルールを知ることです!ここでは、知っておきたい原状回復のガイドラインやトラブル例、退去前に気をつけたいことなどをご紹介しましょう。賃貸物件から引っ越す予定の人は必見です!

  1. 賃貸の「原状回復」とは?
  2. 原状回復のガイドライン
  3. 原状回復で見られるトラブル

1.賃貸の「原状回復」とは?

一般的に賃貸借契約書には、「敷金から原状回復費用を控除した残額を返金する」という内容の条項が書いてあります。アパートやマンションなどの賃貸し物件を借りるとき、「原状回復」という言葉を初めて聞いたという人も少なくないでしょう。原状回復とは、簡単に言うと「借りる前のきれいな状態に戻す」ことです。

ただし、何年か住んだ部屋を借りたときと全く同じ状態に戻すのは不可能でしょう。原状回復の範囲や金額をめぐっては、借り手と貸し手の考え方が異なることもあります。最近では、原状回復費用に関してのトラブルも増加しているのです。

賃貸のアパートやマンションに住んでいる人で、引っ越しの準備を進めているなら「原状回復」に関しての知識をしっかり得ておいたほうがよいでしょう。

新築のときと同じ状態に戻せということではないんですね。
はい。経年劣化は含まれません。

2.原状回復のガイドライン

ハウスクリーニングの責任が貸し主と入居者のどちらにあるのか、原状回復をめぐりトラブルが年々増加しています。そこで、平成23年、国土交通省は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を改正しました。「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」とは、平成10年、当時の建設省(現・国土交通省)が原状回復をめぐる裁判例を集めて作成したものです。これには原状回復におけるクリーニングの範囲や費用の目安などが記載されています。賃貸物件を退去する前に目を通して内容を知っておきましょう。

2-1.原状回復の基本ルールを知ろう

きれいにハウスクリーニングをして借りたときの状態に戻すといっても、「完璧に戻せ」というわけではありません。

原状回復の基本ルールとしては、基本的に通常の経年による劣化や損耗(そんもう)は貸し主の負担になります。そして、故意や過失によって生じたキズや損耗は入居者の負担となるのです。つまり、賃貸物件を借りている人は他人の部屋を借りているので注意深く使用・管理しなければならない…ということでしょう。

2-2.貸し主が負担すること

賃貸物件における原状回復で、貸し主が負担するのは以下のようなことがあります。

  • 経年の変化によるもの。
  • 通常に部屋を使用したうえでの損耗(そんもう)。

たとえば、以下のような例は貸し主の負担になります。

  • 日差しによる壁紙や畳、フローリングなどの変色。
  • 家具の設置による床やカーペットのへこみや設置跡。
  • テレビや冷蔵庫などの後部壁面の黒ずみ。
  • 壁に貼ったポスターや絵画などの跡やピンの跡。
  • 地震などの災害で破損した窓ガラスなど。
  • 網戸の張り替え。
  • エアコンの内部洗浄。
  • 台所やトイレの消毒。
  • カギの取り替え。

ほか。

上記のような汚れや損傷などのクリーニング・修理代は、入居者が支払う必要はありません。

詳細は、再改訂版の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が国土交通省のホームページからダウンロードできるのでチェックしてみましょう。

2-3.入居者が負担すること

入居者が負担するのは以下のようなことがあります。

  • カーペットに飲み物などをこぼした跡のシミやカビ。
  • 冷蔵庫下のサビ跡(サビを放置して床に損害を与えた場合)。
  • 引っ越し作業などで生じたキズ。
  • 日常の掃除をおこたったための台所の油汚れ。
  • 結露(けつろ)を放置したためのカビやシミなど。
  • クーラーの水漏れ放置による壁の腐食。
  • 長い年数タバコを吸ったことによるヤニや匂い.クロスの変色。
  • ペットによる柱やクロスのキズや匂い。
  • 子供の落書き。
  • カギの紛失。

ほか。

上記のように、入居者の過失や故意による汚れや損傷などは、入居者が責任を持って修理やクリーニングをする必要があるのです。

こちらも前項同様に、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に詳細が書いてあります。引っ越しの予定が決まったら1度目を通してください。

原状回復のガイドラインを知っておくことが大切なんですね。
はい。これを知っていれば退去時のトラブルを防ぐことができるでしょう。

3.原状回復で見られるトラブル

最近、入居者が賃貸アパートやマンションを退去するときに、貸し主がハウスクリーニングなど「原状回復費用」として高額な料金を請求するケースが多くなっています。敷金を返さない、敷金を上回る金額を請求するなどのトラブルが相次いでいるのです。原状回復に関して、貸し主と入居者との考え方が異なることが原因でしょう。

国民生活センターに寄せられた原状回復に関しての相談数は2010年〜2014年の5年間で平均14770件(2015年度は7760件と減少傾向)です。どのようなトラブルが多いのでしょうか。代表的な例を挙げてみます。

3-1.トラブルの例

  • 賃貸物件を退去するにあたり、高額のクリーニング代を請求された。原状復帰ガイドラインを読み、減額交渉をしているのに全く管理会社が対応してくれない。
  • 3年以上入居した賃貸アパートを退去した。退去時の立ち合いでは「クリーニング代の請求はありません」といわれたのに半年後に実家に請求書が送られてきた。払う必要があるのか?
  • 入居前からサッシの塗装がはげていた。塗装代が敷金から引かれているがどうしたらいいのか?
  • ペット可の賃貸マンションに2年住んだ後に退去した。入居時から床や壁などに汚れがあったのだがその分のクリーニング代も請求された。もとから汚れていた証拠がないので支払えと強気でいわれて困っている。

3-2.できるだけトラブルを防ぐために

賃貸マンションやアパートを退去するときには、まず「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」をじっくりと読んでみましょう。そして、入居者の責任となる汚れや損傷は退去前にできるだけクリーニングや修理を行ってください。

敷金からハウスクリーニング代を引かれないようにするためには、目立つ場所をきれいにすることが大切です。力を入れて掃除をしておきたいのは以下になります。

  • 台所
  • お風呂・洗面所・トイレなどの水回り
  • 窓と壁

台所の油汚れやお風呂場のカビなどは、普段からこまめに掃除をしていないと一度にきれいにするのは難しいものです。引っ越しの予定を決めた段階で少しずつ掃除を始めてください。

また、自分のミスで壁などを汚してしまった場合も、専用のクリーナーなどでできるだけ落としておきましょう。さらに、窓がピカピカにきれいになっているとよい印象がアップします。退去直前の天気のいい日に窓の内側と外側、サッシのみぞなどの掃除をしてください。

現在でも退去時のトラブルは多いんですね。
はい。トラブルを防ぐためには、入居時に契約書を確認し、分からないことは質問しておくことも大切です。

まとめ

賃貸のマンションやアパートなどを退去するときには、「原状回復」をしておかないと、敷金からハウスクリーニング代や修繕費が引かれてしまうことがおわかりいただけたかと思います。

多くの敷金を取り戻すためには、自分でできるかぎり部屋をきれいにして退去することが大切なのです。ただし、すべてを自分の責任で行う必要はありません。住んだ年数にもよりますが、年月の経過で自然に劣化した壁紙の色あせなどは責任を負う必要はないのです。

そこで、一番重要なのは、退去する前に厚生労働省が公開している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に目を通すことでしょう。そして、自分できる部分はきれいに掃除して退去する部屋の印象をアップしてください。敷金からクリーニング代を引かれるリスクが軽減されます。また、ガイドラインを入手しておけば、もし管理会社などから法外なクリーニング・修理代を請求されたときに交渉もできるのです。

もし納得のいかない金額を請求された場合は、各都道府県の不動産相談窓口や国民生活センターに、自分のケースと貸し主側の言い分の両方を説明して相談してもよいでしょう。