飲食店など、店舗をかまえる方が必ず知っておかなければならないのが店舗清掃についてです。店舗清掃は、一般家庭と違い「なんとなくきれいにしている」では済まされません。特別な清掃の管理基準もあるのです。そこで今回は、店舗清掃の基礎知識や、店舗を清潔に保つためのポイントをご紹介します。

  1. 店舗の清掃とは
  2. 店舗の清掃方法とは
  3. 店舗の清掃の業種ごとの注意点
  4. 店舗清掃の業者の選び方
  5. 店舗清掃・クリーニングについてよくある質問
  6. まとめ

「きれいにしているつもりだけど大丈夫かな?」「やり方がよくわからない」「代行を依頼したいけどどうしたらいいのだろう?」など、店舗清掃・クリーニングに不安を持っている方だけでなく「毎日掃除してるから大丈夫!」と思っている方にこそ、ぜひ読んでいただきたい内容です。ぜひ最後まで目をとおしてください。

1.店舗の清掃の基礎知識

1-1.店舗清掃とは?

店舗清掃とは、店舗を清潔な状態に保つことをいいます。ほとんどのサービス業や製造業では、「5S」活動(整理・整とん・清掃・清潔・しつけ)を取り入れていることでしょう。「清潔」な状態を保つために、整理・整とん・清掃をおこなう必要があり、そのうちの一つが清掃です。どれか一つだけでは清潔は保てません。きちんと整理→整とん→清掃の順番を守りましょう。

1-2.店舗清掃の必要性

客としてさまざま店舗に来店してみると、店舗によって清掃のレベルの違いを感じることはないでしょうか。特別きれいなお店もあれば、まあ最低限の清掃だなというお店もあります。経営者やスタッフは毎日自分の店舗を見慣れているので、汚れなどに慣れてしまいがちです。しかし、客は初めての来店だったり来店頻度が低かったりすると、ちょっとした汚れが気になることがあります。清掃のレベルは想像以上に客に伝わりますので、手抜きをしないように気を付けましょう。

1-3.一般住居の清掃との違い

店舗と一般住居の大きな違いは、客を招く・もてなす頻度と質です。一般住居は基本的には自分が快適に過ごせればそれでいいでしょう。来客の頻度もそこまで高くなく、定期的に掃除しなくても困らないはずです。一方で、店舗は毎日何人もの客を迎え入れます。しかも、その客は「遊びにきたお客さん」ではなく、お金を払って商品を購入したい(ショップ系)・店舗に滞在したい(飲食店)と思ってきている方たちです。そんな方たちをおもてなしする意味でも、店舗清掃は一般住居の清掃と同じであってはいけません。

1-4.店舗清掃を怠るとどうなるか

上記のとおり、店舗清掃は客をもてなす行為のひとつといえるでしょう。これを怠るということは、客にたいするもてなしの心をなくしていると思われてしまう可能性すらあるのです。有名なグルメ指標に「汚くても人気がある飲食店は本当においしい」というものがあります。この言葉が示すとおり、汚い店舗というのはそれだけで来客のハードルが一つあがるということです。清潔にしておくことに越したことはありません。また、不衛生な飲食店では食中毒・病気の拡散などの危険性もあります。3-2.も併せてご参照ください。

2.店舗の清掃方法とは

2-1.清掃箇所について

2-1-1.床・窓・かべ

面積が多いため清掃が大変ですが、客の目にもとまりやすい箇所です。開店前・開店後の清掃はもちろんのこと、営業時間内にもこまめに掃除できるようにしておきましょう。

2-1-2.外まわり

玄関先・店外マットなどにも気を使いましょう。店の前の落ち葉や雪などを取り除いているかどうかはお店の集客力にかかわってきます。

2-1-3.設備(トイレ・エアコン・厨房(ちゅうぼう))

サービス業ではトイレ掃除に一番気を使いましょう。きれいなお店でもトイレの掃除が行き届いていないと客離れにつながってしまいます。また、エアコンや空調はにおいにも注意してください。飲食店では、生臭いにおいやホコリっぽいにおいがしたら客としては一発でNGです。客に見えないからといって厨房(ちゅうぼう)の掃除を怠らないようにしましょう。不衛生な環境で作る料理や飲み物では、客をつかむことはできません。

2-2.日常清掃の方法・道具について

2-2-1.日常清掃の方法

店舗清掃は、日常業務の中に組み込む必要があります。開店前・営業中・閉店後それぞれで掃除する場所・担当者・チェック項目などを決めておきましょう。掃除するスタッフに責任を持たせることが大切です。

2-2-2.掃除道具について

掃除する箇所によって掃除道具を適切に選びましょう。たとえば以下のようなものがあります。

  • ふきん・ダスター・アルコールスプレー→ガラス・床等なんでも
  • ちりとり・ほうき→店外・ハードフロア(木材・タイル床等)に
  • 掃除機・コロコロ→ソフトフロア(カーペットなど)に
  • バケツ→店外・掃除道具の漂白用に
  • はたき・ハンディーモップ→ディスプレーや高い位置のホコリ取りに
  • ゴム手袋・マスク:薬剤を使う時や、汚い場所の掃除に

ふきんやダスターもきれいにしておきましょう。汚れたダスターが客の目に触れると「あんな汚い掃除道具で掃除しているのか……」と思われてしまいます。ストックは大目に用意しておきましょう。客前で使う用に、オシャレなダスターを別で用意しておくのもおすすめです。

2-3.頻度について

毎日すべての箇所を完璧に清掃することは不可能ですので、優先度と頻度を決めて清掃しましょう。

2-3-1.日常清掃

下記の箇所の掃除は毎日おこないましょう。時間を決めて1日に何度か清掃することをおすすめします。

  • 店内の目に触れる箇所(床・かべ・窓・机・いす・ディスプレーなど)
  • 店外のゴミ取り
  • トイレ掃除
  • 厨房(ちゅうぼう)まわり・調理場・排水溝・換気扇(表面)など
  • 閉店後に掃除道具の洗濯・漂白など

2-3-2.定期清掃

週に1度~月に1度程度は掃除しておきたい箇所をご紹介します。毎日激しく汚れる場合は日常清掃に取り入れましょう。

  • エアコン内部
  • トイレタンク
  • 換気扇内部
  • 冷蔵庫・冷凍庫内

2-3-3.臨時清掃

特殊な状況の時におこなう清掃もあります。たとえば以下のような場合です。

  • 悪天により泥水などで激しく汚れた場合
  • 客が(おうと)・流血等した場合
  • 繁忙期など営業時間中に掃除できないことがあらかじめわかっている場合

とっさの時にあわてないためにも、マニュアルを作っておくといいでしょう。マニュアルについては次項で説明します。

2-4.清掃マニュアルについて

2-4-1.清掃マニュアルの必要性とは?

人によって清掃のレベルが異なってしまい、Aさんはとてもきれいにするけれど、Bさんの時は汚い……などということがあります。また、前項のような臨時清掃の場合にも冷静に対応できるようにマニュアルを用意しておきましょう。チェーン店などですでにマニュアルがある場合はそちらを参照してください。

2-4-2.清掃マニュアル作りのポイント

マニュアルはチェックリストが最適です。担当者・清掃時間・清掃内容をリスト化しましょう。また、臨時清掃では、ゴム手袋・マスクを装着する・換気をするなど、うっかり忘れがちな内容もリスト化しておくと安全です。

3.店舗清掃における業種ごとの注意点

3-1.飲食店の特別な清掃について

飲食店では、厨房(ちゅうぼう)周りの清掃が大変重要です。油汚れ・タンパク質汚れなど、さっとふくだけでは清掃しきれない汚れがたくさん付いてしまうのが飲食店の特徴でしょう。また、営業時間中には食器類がどんどん汚れるため、食器・シンクなどの掃除も大変です。油汚れによる排水管の汚れも一般家庭の比ではないでしょう。油汚れは放置するほど落としにくくなってしまうので、面倒でも毎日掃除するほうが結果的には楽になります。

3-2.特定建築物の場合の注意点

店舗・事務所・学校など、人が多く集まる場所には建築物環境衛生管理基準が適用されます。空気循環や飲料水・雑用水などを一定の基準で清潔にしておく必要があるのです。他にも、ねずみ・害虫・排気・排水などについても取り決まりがあります。清掃については、「空気調和設備等の維持管理および清掃等に係る技術上の基準」を守らなければなりません。半年に1度の大掃除や日常清掃などが義務付けられています。

3-3.注意点

建築物環境衛生管理基準は知らなかったでは済まされません。また、知っていてもついサボってしまったり経営上清掃が難しい場合もあるでしょう。しかし、多くの人が集まる場所である以上、店舗・厨房(ちゅうぼう)等を清潔にしておく義務があるのです。

4.店舗清掃の業者の選び方

4-1.プロに任せるべき場合とは?

建築物環境衛生管理基準では半年に1度以上大掃除をおこなう必要があるのです。自店でのノウハウがなく清掃に不安がある場合や、経営上自力での清掃が難しい場合には、プロに依頼するという方法もあります。管理基準を熟知した業者であれば、安心して任せられるでしょう。経費はかかってしまうものの、時間と安全をお金で買えると思えば安いものです。

4-2.選び方のポイント

  • 店舗清掃を依頼する際は、下記のポイントをおさえましょう。
  • 店舗清掃を取り扱っている業者
  • 清掃箇所・内容など、費目と料金が明確である業者
  • 作業日・時間帯を選べる業者
  • クリーニング協会などの認可を持っている業者

4-3.料金相場

清掃業者は、箇所・清掃内容・汚れ具合などで料金を定めていることがほとんどです。おもな料金相場をご紹介します。

  • 業務用空調機・エアコン:25,000円~
  • ダクト清掃(排気ファン内部):30,000円~
  • 床(厨房(ちゅうぼう)):1,000円~
  • 床(カーペット):800円~
  • 床(フロア):300円~

業者は店舗の状況などによって料金がまちまちですので、いちど見積もりを取ることをおすすめします。

4-4.清掃までの流れ

清掃業者に依頼する際は、おもに以下のような流れとなります。

  1. 見積もり依頼をする(電話・HPなど)
  2. 店舗にて見積もり作業
  3. 清掃の依頼(清掃日を決める)
  4. 清掃
  5. 料金支払い

無料見積もりをおこなっている業者では、料金を見てから依頼をするかどうか決めることができます。

4-5.相談窓口

初めて清掃業者に代行を依頼する際には、不安な点も多いでしょう。ほとんどの清掃業者ではHPに問い合わせフォームを設けています。電話では緊張する・無理やり契約をさせれたらどうしようと不安に思っている方におすすめです。どこがこういう汚れ方をしているのですが、依頼できますか? などの問い合わせもできますのでぜひ利用してみましょう。

4-6.注意点

清掃業者に依頼する際は、見積もり書の費目・サービス内容・料金・オプション作業などをしっかりと確認しましょう。とても安いので契約をしたものの、希望とおりの清掃をしてもらえなかった・高額のオプション料金を請求された、というようなことがないように、事前に実店舗で見積もりをおこなうのが安全で確実です。

5.店舗清掃・クリーニングについてよくある質問

5-1.グリストラップの清掃方法は?

飲食店など、調理施設にはグリストラップというものがあります。排水がそのまま下水に流れないようにするためのものです。油分や生ゴミがたまるため大変汚れやすくなります。毎日ゴミを取る・油分をすくう・沈殿した汚れを取る・定期的に内部のトラップ内の清掃をおこなうなどの対策をしましょう。放置すると悪臭や害虫のもととなってしまいます。

5-2.店舗清掃のコツは?

念入りに清掃をしているつもりでも、毎日見慣れた目では汚れに気づかず残してしまうこともあります。スタッフとお互いにチェックしあったり、店舗の写真を撮るなどして、冷静な目でチェックするとさらにきれいな状態を保つことができるはずです。

5-3.掃除道具の交換頻度は?

店舗を清潔に保つためには、掃除道具もきれいにしておく必要があります。消耗品類は期間を決めて汚れる一歩前に交換しましょう。ある程度ストックを持っておくと、臨時清掃の際にもあせりません。掃除道具は客の目に触れないほうがいいですが、見られたとしても大丈夫なくらい清潔に保っておきましょう。

5-4.店舗に害虫が出てしまった場合は?

万が一店舗に害虫が出てしまったら、すぐに駆除業者や役所に連絡をしましょう。市販の虫取りトラップなどを使うと、「この店は虫が出るのか……」と客を嫌な気分にさせてしまいます。また、害虫の侵入口がありそうな場合は、駆除と併せて侵入口をふさいでもらう施工もおこなってください。

5-5.清掃費用を安くおさえたいのですが

清掃範囲を狭くしたり、自分で落とせる汚れをきれいにしておくことがポイントです。「あそこもこちらも」と依頼するより、「ここだけは自分でどうにも掃除できない」という箇所だけを清掃代行してもらうほうがよりリーズナブルになります。

6.まとめ

いかがでしたでしょうか。飲食店等、店舗をお持ちの方にはかかせない清掃についてご紹介しました。店舗を清潔に保つには毎日コツコツ掃除することと、徹底的に掃除する機会を設けることが大切です。客の満足度を高めるためにも、スタッフが毎日気持ちよく営業するためにも、店舗清掃を心がけましょう。